いよいよ最後の「皮下補液」についてです。通常は「皮下点滴」と言ってるけど、本来人間のように静脈内にゆっくり点滴するのを首の後ろ側に短時間で入れる方法です。犬や猫はそこら辺かなり皮膚の弾力性と余裕があるので、リンゲルや生理食塩水など数百ml入れる事も可能です。これだと時間的に数分間で済むし、入院の必要もないので獣医療では割とよく行われる治療方法となっています。

 

 

 

さて本題です。脱水は腎臓の血流を悪くして更なるダメージを与えるので、迅速に脱水の改善を行わなければ重篤な腎機能障害を引き起こす恐れがあります。皮下補液は脱水を予防すると共に、体内の水分量を増加させて尿量を増やし、老廃物の排泄を促す効果があります。

 

通常慢性腎臓病で通院される子のほとんどは緊急性もないので週1〜3回ペース位で行ってるけど、ただしこの時に気をつけるべきは皮下補液の量になります。

 

皮下補液はあくまで脱水や電解質の補正にあるので多ければ多いほど良いわけでもなく、体重1キロあたり20〜30mlが目安とされてるので、普通の猫の大きさであれば75〜150mlが1回量となっています。また病状進むと体重も落ちてくるので、入れる量もそれに合わせて調整して行かないといけません。過去に自宅で行いたいと相談受ける事もあったけど、この入れる量の問題と、取り扱い状況によっては感染や皮膚の損傷もあり得るので当院ではあまりお勧めしていません。

 

あともう一つの問題点は漫然と皮下点滴続けていると吸収性悪くなって心臓や腎臓に負担かかり、最悪の場合は肺水腫といって肺に水溜まって呼吸困難の状態に陥って亡くなるので、ここら辺も見極めながら随時検査や入れる量を考えて行かないといけません。出来れば数ヶ月に一回程度は、腎機能や電解質に変化ないか確認したいところです。

 

 

 

 

基本的にステージ2〜3以降が皮下点滴の対象となっており、慢性腎臓病だからといって必ずしも皮下点滴するわけではなく、また決して皮下点滴によって治る病気ではないという事も知っておいて欲しいと思います。

 

本当に具合悪かったり術後の合併症予防の時には入院⬆︎して、輸液ポンプという機械を使って静脈内点滴をゆっくり行っていきます。時間的には数時間から長い時には半日程度だけど、動物によっては咬んで取ろうとしたり動いて輸液ラインが体に巻き付いたりするので結構スタッフは目が離せません。ここら辺が動物医療の難しさでもありますね。