前回に引き続き、本題の肥満細胞腫についてのブログです。
肥満細胞腫は限りなく良性に近い低悪性度のものから、進行度の極めて速い高悪性度のものまで様々で肉眼的にその鑑別は不可能です。なので基本的には細胞診あるいは手術で摘出後の病理検査で診断(グレード判定は組織検査)となりますが、小さかったり悪性腫瘍に見えない場合は皆さん手術を迷われる方も多いので、その場合先ずは細胞診を行ってから手術の判断となります。ただ知っておいて頂きたいのは、細胞診<病理組織検査という事です。細胞診は出してみると意外と良性悪性の境界不明瞭いわゆるグレーゾーンで出て来る場合も多く、結局手術後丸ごと組織を提出してくださいという流れ(ケース)も少なからず多いように感じます。
⬇︎ 犬種別では、何故か圧倒的にパグが多いのが特徴です。
⬇︎ 手術前のステロイド治療、これ実はホント悩むところなのです。(長くなるので、内容割愛します)
※ ステロイドホルモン治療は先生は早めに切り上げるそうで、「手術後化学療法は半年程度継続するけど、ステロイド治療は怖いので数ヶ月で終わり。化学療法は半年もやるのにステロイドはすぐ切るのか?と皆さん思われるかもしれないけど(講師談)」って仰ってました。たしかに多分多くの先生は、化学療法の方がステロイドよりも怖いかと想像します。
⬇︎ 下は3枚ともパグの肥満細胞腫の写真です。ぱっと見おできの様な感じで、皆さんもコレが悪性腫瘍にはとても見えないかと思います。ちなみに、顔の口唇部周辺に出来る肥満細胞腫の多くはリンパ節転移が認められる程悪性度高く、非常に要注意とのことです。
⬇︎ 少し写真では分かりにくいかと思うけど、かなり小さな肥満細胞腫です。オーナーさんからの申し出でもない限り、こちらの方から「すぐに検査してみましょう!」とか「手術して検査に出してみましょう!」とは言い出しにくい感じのものです。「大きくなるかどうか気を付けて見ててください」というのがパターンかと思います。ある意味恐ろしいことです。
基本的に肥満細胞腫は手術可能であれば、先ず出来るだけ広く深く掘って切除するのが1番です。3センチマージンが理想だけど現実的に2センチだろうがもっと少なかろうがとにかく切り取ること。ただしマージン少ない程再発の可能性高まるけど、それでも放置するよりはずっとマシで、もし次から次へと出てくる様なら次から次と切り取って行くのが基本のようです(勿論年齢的体力的に可能であればという条件)。
腫瘍全般にコレは言えるけど、出来るだけ切除して病理検査レベルに落としてから化学療法すると、その後の生存率には大幅な違いが出る事が分かっています。
⬇︎ 肥満細胞腫は近くのリンパ節に転移の可能性もあるので、診断上要注意という説明がありました。細胞診の重要さはわかるけど、問題はその動物の性格と検査コストの問題も見逃せないような気がします。
ちなみに米ニューヨーク州では、レントゲン撮る際動物に麻酔(鎮静剤)を入れるのが法律で決められてるそうです。眠らせた後に体の両側などをサンドバッグで固定し、スタッフは部屋から出て撮影だそうです。早い話、人間の病院と同じ様にするという事ですね。ただ足とか微妙な角度調整必要だったらどうやるんだろ?などと思いました。
というわけで、アメリカで臨床経験ある講師の先生は動物に鎮静かける事に相当な経験値と自信を持ってるらしく、必要なら躊躇なく鎮静剤投与して検査する様です。
⬇︎ 肥満細胞腫の約3割がリンパ節転移。やはり恐るべき悪性腫瘍ですね。
⬇︎ しかし諦めてはいけない!しっかり化学療法でケアーしましょう!という内容です。
治療は先述したように外科的切除が先ずは基本ですが、他には放射線治療や抗癌剤投与、最近では分子標的薬(イマチニブ・トセラニブ)という比較的新しい治療法についての内容もありました。ここら辺は専門的なお話が多いので割愛したいと思います。
今回は症例数多いという理由でパグ中心の内容でしたが、勿論他犬種でも猫でも発生は見られるわけですから、皆さんも日頃撫で撫でしてみて「あれ?」と感じる事がありましたら、なるべく早めに先ずは受診なさってみてくださいね。
※ 実はここまでの内容をブログで公開してもいいものかどうか迷う所も多いにあったのですが、オーナーさん皆が皆情報に敏感というわけでもなく、また病院で各先生から説明受けてすぐ全部納得できるわけでもなく半信半疑のオーナーさんはたくさんいらっしゃるかと思います。中にはこのブログで「そうなんだ?やっぱり検査は必要なんだ?早期切除が重要なんだ?」という方もいらっしゃるかと思います。皆さんのご参考になれば幸いです。
⬇︎ 地域の人気者になりそうですね。
⬇︎ 大笑いしてしまいました。