いよいよ「猫の心臓病」最後は治療についてです。
「治療」
症状と検査結果にもよるけど、通常呼吸困難起こしてる場合多くの例で利尿剤投与とICUでのきめ細かい酸素や温度管理と安静が必要となります。これは前回お話ししたように少なからず肺水腫や胸水を伴ってる子が多く、そのため利尿剤で水分の排出を促しICUで少しでも呼吸を楽にしてあげるしか方法がありません。
状況によって「気管支拡張剤」「ステロイドホルモン」「抗生剤」「ビタミン剤」なども投与するけど、早い子だと翌日には少し改善してくる子もいるのでとにかく諦めない事 あきらめたら、そこで試合終了だよが肝心です。
正直費用はそれなりにかかってしまうけど、この病気は症状の展開早く短期決戦の意味合い強いのでまずは治療始めて一晩今後の事も含めて考えて頂けたらと思います。
「後ろ足のマヒ」
呼吸器系の異常無く食欲元気にも問題なければ飲み薬だけでも可能かもしれないけど、通常痛みを伴って後脚は冷たくなり食欲も低下して厳しい展開となるケースが多いです。過去に1ヶ月程延命出来た子はいるけど、大部分の子は数日間で亡くなってしまう位の現状で外国だと安楽死するケースも珍しくはないようです。
血栓が詰まるという事は心臓や脳にも詰まりうるので、そのため急変したり突然死とかも有る位後脚の麻痺は非常によろしくない症状となります。ちなみにドライヤー等で一気に温めて体温上げたくなるけど、あまり急激に温めると血栓が拡散して肺塞栓等突然死の原因にもなってしまうようです。いわゆるエコノミー症候群と似たような原理ですね。
首都圏などの高度医療病院では手術も行ったりするようですが我々一般開業医にとってはハードル高く、又手術が可能であっても決して経過は楽観的ではない病状になります。なお病院によっては静脈内点滴を行う所もあるようだけど、心臓への負担と肺水腫のリスク(過去に経験あり)から当院では必要最小限の水分補給と抗凝固剤等の静脈注射程度に留めています。
「飲み薬」
血管拡張剤と言って血流を良くして心臓の負担を減らすお薬と、急激に生じる「血栓塞栓症」を治療或いは予防する血栓を溶かすお薬(抗凝固療法)が主体で、ほとんどの子は既述の通り数日から長くて数週間の短期決戦となるけど、運良く一山超えて良くなった様に見えても再発率は比較的高く、基本的に飲み薬は一生必要とされる病気です。
⬇︎ WEBカメラを設置しておくと夜中でも見れて安心です。ICUのドアは透明アクリル板なので、中の動物の動きを検知してスマホで確認出来たりもするのでなかなか便利、文明の利器に感謝ですね。猫は調子が良いとグルーミングをよくするので、1番下の様な行動が見られれば一安心です。
全く無症状で見た目健康的でたまたま発見された場合であれば、少し様子見してから再検査で確認してからでも良いかもしれません。以前お話ししたように血液検査では何らかの一時的要因で異常値を示す事もあるので、少し日を置いてから調べ直して確認した方が間違いないと思います。
あと治療とは直接関係ないお話です。
たまに血液検査でコレステロール・中性脂肪や血小板が異常に高い子がいるけど、こういう子はいわゆる血液ドロドロ状態で血行が滞りやすいと考えられます。
心筋症の子は発病しやすくもなるので出来るだけ脱水しないよう気をつけて、また血液サラサラ状態にするために太り過ぎにも十分ご注意くださいね。
ちなみに犬や猫には無理だけど人間の方では、「タマネギ」「にんにく」や「グレープフルーツ」などが血栓を溶かして血液サラサラにしてくれる食物として有名ですね。私は焼肉屋さん行ったら必ずタマネギ焼き食べます、余談ですが。