腫瘤(出来物)の診察で当院で1番多いのは、多分皮膚もしくは皮膚の下に出来る物ですが、その次が乳腺に出来る腫瘤かと思います。大きさは小さい物で米粒程度、大きい物だと15〜20センチ近くの物まで様々で、放置するとどんどん大きくなるだけでなく、時には穴が開いたり破裂する様に開いたりするケースもあるので要注意です。

 

一般に皮膚周辺の出来物は老化によるものだったり脂肪腫という良性腫瘍が多いですが、中には悪性黒色腫や肥満細胞種という癌もあるので決して楽観はできないです。背中付近の出来物で割と大人しい子、尚且つ1センチ程度の大きさの物なら局所麻酔での手術も十分可能なので、もし発見された場合は破けたりする前に早めに診察においで下さいね。

 

そして手術も比較的多い乳腺部の腫瘤ですが、これにはいわゆる乳癌を始め良性腫瘍や単なる乳腺炎の場合もあるので、時にはその診断のため針を刺して調べたりもします(細胞診)。ただし乳腺部の場合厄介なのは、他の皮膚などの細胞診と比較して誤診が出やすいと言われてます(検査屋さん情報)。腫瘍は悪性と言っても癌細胞は均一に中に散らばってるわけでなく、ましてや乳癌、良性、乳腺炎と全部含まれてる子も珍しくない上に、大きいのが良性で小さいのが癌というケースもあるので複数本針刺して検査ではどうしても正確さに欠けます。つまり実際は乳癌なのに、良性あるいは乳腺炎という結果もあり得るという事です。一つのたたき台として参考にするには良いのですが、丸ごと鵜呑みにして放っておくと大変な事態に繋がりかねないのでどうかご注意ください。また特に猫の乳癌は非常に経過速く、術後もすぐに再発を繰り返したりするケース多いので早めの処置が大事です。

 

なお乳癌は男性には極めて珍しくほぼ女性の専売特許のようにもなってますが、これは女性ホルモンの影響によるものです。犬や猫も同様で私はオスの乳癌をまだ診察した事がありません。以上の理由から、昔は乳腺腫瘍摘出と同時に避妊手術も一緒にというのは普通の事でしたが、近年これについて段々と分かってきた事があります。

 

乳癌予防としての避妊手術は早ければ早い程効果的だけど、ただし2歳を過ぎてからの手術ではほとんど予防効果に変化無しというデータが出てきました。

 

若干違うかなという程度で、同時に避妊手術をしないよりはしておいた方がややベターという感じなので、今現在当院では積極的にお勧めしていません。実際同時に避妊手術した子は勿論、生後半年で避妊手術した猫でさえ乳癌発生した子も何度か見てるので尚更そう感じます。

ただここら辺は病院によって考えもやり方も違うので、もし他院にかかってる方でご覧下さってるお方おりましたら、その際にはそちらの先生とよく話し合って下さいね。よろしくお願いします。

 

⬇︎ 乳腺腫瘍の約半分50%は乳がんという、恐るべきルールがあります。

 

 

 

 

⬇︎ 去年暮れ頃「昭和の歌」シリーズやったけど、ノスタルジーに駆られて今度は洋楽版です。