本日の話題は「猫の心臓病」についてですが、今回も色々整理しながらアップしていこうと思うのでよろしくお付き合いお願いします。

 

⬆︎ 反応出るまで10数分かかります。青色の小さな円形スポットが2つ出て左側が濃ければ正常、右側が左側と同じか濃ければ異常値となります。(写真のは異常値です)

 

 

 

「犬の心臓疾患」についての話題やセミナーは数あれど「猫の心臓病」に関するものはあまり多くない状況ですが、これは発生頻度においても診断上や治療上の難しさにおいても犬より厄介で、なおかつ病気の進行度合いが圧倒的に速いことが要因かと思われます。

 

なにしろ症状出て気付いた時にはあれよあれよと進行して亡くなってしまうケースも珍しくありません。1番目立つ分かりやすい症状は後ろ足が突然動かなくなって元気食欲が減少する事ですが、ただこれだけなら椎間板ヘルニアでも起こり得るけど、そのうち段々と後脚は冷たくなり直腸温(動物の場合お尻から体温計入れて計る)も低下していきます。ここまで来ると我々一般開業獣医師でも「心臓疾患による血栓が原因」と確信出来るけど、まだほとんど無症状で元気も食欲もあるうちだと実際なかなか発見するのは犬と比べて相当な難しさがあります。

 

まず「」「疲れやすい」「呼吸状態おかしい」等の犬では割と普通に見られる症状少なく、そのうえ「レントゲン上異常が出にくい」「心雑音聞こえるケース少ない」「心エコーは高度な技術必要」「心電図は猫の性格などによって左右され時間かかる」など、猫ならではの診断上の厳しさもあって容易ではありません。

症状出ても疑わしいかな?と思ってるうちにどんどん進行して亡くなったんでは診断の付けようもなく、オーナーさんは勿論我々獣医師にとってもモヤモヤ感残る後味悪い病気と言っても過言ではありませんでした。

 

スマホやタブレットお持ちの方は⬆︎のパンフレットを拡大して頂くと概略分かると思うけど、とにかく「犬に比べて分かりづらく気付きにくい」、故に深刻な状況なるまで診断が難しく突然死の原因にもなり得るという現実。そこで登場したのが今回本題となる、血液検査で早期に発見出来る「心臓バイオマーカー」という検査キットです。

 

数十年前アメリカで発見された「タウリン欠乏による拡張型心筋症」は良質なキャットフードのおかげでほとんど無くなり、代わりに今や猫の心臓病の大半を占めるのが「肥大型心筋症」と言われてます。この検査キットはその心筋に負担かかったときに放出されるホルモンを測定して確認するもので、無症状の猫でも早期に発見出来るという所で非常に有用なキットです。たまに目ヤニ鼻水くしゃみ等の症状無く咳や呼吸荒いなど気管支炎症状の子いるけど、案外心臓疾患からの可能性もあるので今後は積極的にお勧めしてみようかと思います。

 

当院では今年4頭の子が残念ながら異常値でしたが、あるオーナーさんは原因や病気がハッキリしてむしろ良かったとも話されておりました。まだ無症状の子であれば早期治療も開始出来るので、それだけ延命効果も期待出来るかと思います。ちなみに症状の程度によって数日から数ヶ月(1年以内)、全く無症状の子でも3〜5年の生存期間とされる非常に厳しい病気となっています。

 

 

 

 

治療は人間のように心臓移植出来ないのであくまで内科治療が中心となり、心臓への負担減らす血管拡張剤や血栓を溶かす薬、血栓を出来にくくする抗血小板剤などが主体となります。完治する事のない進行性の病気なので、出来るだけ心臓への負担減らすべく安静にして一生投薬続けるしか今現在方法がありません。最近は猫の健康診断メニューのオプションにしてる病院も出て来てる様だし、これからはスタンダードな検査になるかもしれませんね。