オーナーさんのご好意により、猫の腹腔内腫瘍摘出手術をアップさせていただきます。
1週間前から何か調子悪いと来院された猫ちゃん。触診の結果お腹の中(右腹部)に大きな出来物ある事が分かり、レントゲン撮って大きさ測ってみたらザックリ6センチ✖️7センチ大位の球状の腫瘍でした。この子にしてみれば結構な大きさにはなるけど、血液検査であまり大きな異常無く肺への転移も見られない事から、とりあえずは「試験的切開」を行い可能であれば摘出するという流れで手術の予定を組みました。
試験的切開は開腹して摘出困難と判断される場合そのまま閉じる「開け閉じ」という手術ですが、今回オーナーさんには待合室で待機してもらって手術中に確認と相談の上摘出を行いました。実は開けて腹腔内から腫瘍引き上げた瞬間かなりしんどいと感じたけど、このまま閉じるよりは少しでも楽になるならというお話もあって今回摘出に至った次第です。
⬇︎ 閲覧注意です⚠️
一応画像処理はしてるけど、ドギツイと感じた場合即スルーして下さい!
改めて毛刈りして仰向けに横たわってると、お腹が異様にぽっこりしてるのが分かりますね。明らかに初診時よりも大きくなってる感じです。手術は小腸の残りを大腸にくっ付ける端端吻合というものだけど、それぞれ切った断面サイズが違うので大腸の余分な方を縫い縮めてから最後腹腔内洗浄して終わりです。1時間40分程の手術でしたが、この子もよく耐えてくれてホッとしました。
腫瘍は腸に血液を送る腸管膜という脂肪組織が周辺の「小腸」「大腸の一部」「脾臓の一部」を巻き込むように螺旋状に盛り上がっており、本来なら術後経過等考えるとそのまま閉じても決しておかしくない程の腫瘍だったけど脾臓と小腸ほとんど全てと大腸も半分近くを切除し、残ってる小腸と大腸を端端吻合で縫いつける手術で無事なんとか終える事が出来ました。ただ残念ながら腫瘍は既にほとんどの腸間膜に浸潤する様に数え切れない程散らばっており、又そもそもこれだけ広範囲に摘出してしまうと口から栄養取る事もあまり期待出来ないので術後経過は決して平坦ではありません。
術後は半日ほどICUに入れて管理し、夜は通常入院室に移動させてwebカメラで何度か夜中も気になって様子見しました。このwebカメラ以前にも何度か話題にはしてるけど、やはりあると便利で昔のように何度も直接見に行く必要なくなった代わり、気になって夜中でも何度かスマホを手にしてしまうという厄介な文明の利器でもあります。この子はこれだけの大手術(1時間45分位)にもかかわらず、夜中何度か動いたりしてて通知オンにしてると何度もお知らせがやってきました。
⬇︎ ICUはエアコンと床暖房付きの高濃度酸素集中治療室で、単に酸素を流し込むだけでなく酸素濃度(25〜40%)管理や二酸化炭素の排出もコントロールしてくれるので非常に安心。難点はガンガン使うとあっという間に酸素ボンベが空になり、数日に一回は業者さんに交換しにきてもらわないといけません。上2枚の写真はwebカメラ画像をスマホでスクショした物だけど、先日あるオーナーさんから今はもっと鮮明な高画質カメラ出てるのも知り買い替えを検討してるところです。
⬇︎ 当院の猫用入院室です。壁掛けヒーターと床暖房付きなので、寒い季節や最近何故かホントに多い低体温症気味の子が入院しても比較的安心です。この写真の日は3匹入院のうち2匹が夜間も点滴継続中ですが、webカメラは音声も拾えるので点滴機械の警報音がなってもすぐ駆けつけられます。勿論ドキッとするし何かあっても大変だし点滴入れる総量もあるし、最近は極力夜間の点滴治療は控えるようにはしています。
今回このブログをアップするにあたり、オーナーさんは「少しでも可能性あるなら思い切って手術する事で、こういうふうにもなるという事を皆んなにも知ってもらいたい」という様な事を仰ってくださいました。又後日、「退院時や退院後はあの子も本当に嬉しそうで手術して良かった。ありがとうございます」と優しいお言葉を頂戴したりもしました。心より感謝申し上げます。