「安楽死」と聞いたら「延命治療」も連想してしまいます。というより、延命治療の究極最終地点が安楽死なのかもしれません。

いずれにしても当院の場合初診での安楽死は固くお断りしていますが、これは少なからずオーナーさんの責任の下最低限の治療や解決方法を模索して欲しいからです。つまり、ある程度最低限の治療を行った上でと言っていいかもしれません。

 

その上で当院としてやむを得ないと判断した場合のみ、ご家族全員の同意のもと同意書にサイン頂いた上で行っています。誰か1人でも身内の方が反対されてる場合は勿論出来ません。

これはある程度ハードル上げておかないと安楽死の駆け込み寺となってしまうし、実際過去に他院で断られたのでやって欲しいというお方も複数いて少々難儀した記憶あります。特に安楽死の様なセンシティブな問題は、一旦感情がもつれると何かと大変な気がします。

 

 

 

さて本題ですが、延命治療って聞いて皆さんはどうお感じなるでしょうか? 

過去何度かオーナーさんとのやり取りの中で、「でもそれって単なる延命治療ですよね?」とか「延命治療ならしたくない」とか言われた事があるけど、医学的定義の「延命治療」は延命を目的に点滴や人工呼吸器で命をつなぐ医療行為の事であり、慢性腎臓病や心臓病やてんかん発作あるいはガンの転移や再発を繰り返してる状態の子などとは少し違うものになります。

又現実的にもし人と同様の延命治療を行うとなったら、設備的にも人員的にもごく普通の動物病院ではほとんど不可能に近いので相当にハードルは高くなってしまいます。

 

 

とは言えオーナーさんの仰りたい事(延命治療)はよく分かるので、ここではいわゆる「慢性的な病気」「治らない病気」「頻繁に通院必要な病気」、あるいは「ひょっとしたら、このまま亡くなってしまうかもしれない病気」という事でお話ししようかと思います。

 

 

それぞれ年齢や病気の種類や程度は様々なので一概には言えないけど、結論から言うと迷われてるオーナーさんには「なるべく後悔しない選択」をとお話ししてます。

 

人の方では「緩和ケア」や「終末期医療」「尊厳死」など延命治療に関連する事柄あるけど、一般的な慢性◯◯の場合も最終的にそういった段階に入ると同様の選択もあるかもしれません。ただ結局これもオーナーさんの考え方や価値観や環境等によって全然違うし、家族内でも結構温度差は有る様なので、機会あったらこういう事も是非話し合っておかれた方が良いかと思います。

 

1分1秒でも長生きして欲しいと仰る方もいれば、助からないなら治療はしたくないという方まで様々で本当に難しい問題だと感じています。

 

ちなみにだいぶ昔の話ですが、「助かるなら100万払ってもいいが、助からないならこれ以上何もしなくていいから」と仰った方もいましたが、終末医療除いて医療に100かゼロかと言い切れる例はそんなに多くないという事も御理解頂きたいと思います。

 

 

あとよく伺う話としては「最後苦しまないように・・・」ですが、呼吸器系の症状さえ無ければ幸い犬や猫は痛がってシンドそう苦しそうにはあまり見えないので、医学的にどうかという点はさておきそのまま静かに看取ってあげる・・・というのも個人的にはアリだと実は思っています。

たとえその分死期が早まっても覚悟さえ出来ていれば問題無いとも思います。勿論状況次第では「痛み止め」「抗生剤」「消炎剤」等お出ししてるのでご相談ください。

 

ただし年齢がもう高齢あるいは超高齢で、そこに至るまである程度治療や処置を施した上でと思います。なにしろこちらもびっくりする位見た目回復する子もいるので、あまり早期に諦めてしまうのは残念な気がします。

勿論費用的面や通院の手間暇など時間的に厳しい方もおられるでしょうから、やはり安楽死同様、あるいはそれ以上の悩みどころなのかもしれませんね。

 

 

 

<あとがき>

安楽死に引き続き今回の延命治療、私自身病気持ちなので色々考えてしまいました。持病有ると病院も薬局も無い無人島だと何年も生存不可能だけど、日常生活はこうして普通に仕事もプライベートも送れるしやっぱり医療の力って凄いなと思います。命あるもの必ずいつかは終わりを迎えるけど、願わくばオーナーさんからよく聞く「苦しまない最後」を迎えたいものです。