最近スタッフブログと共に滞り気味な院長ブログですが、意外とこのブログというのも結構気を遣うもので、特段拘ってないつもりでもネタ探しから始まって構成から言葉遣いに至るまで長い道のりです。しかも診療に関わる内容であれば間違った情報はアウトですから何でもかんでも取り上げてミスリードできませんし、また読み物としても皆さんに興味持ってもらえて読み易い様にと思ってるつもりなので、スタッフ日記の方もだろうけどある程度時間的余裕と気持ちの余裕(テンション)ないとアップ出来ない現実があります。
と言い訳はこのくらいにして、今回は以前にも取り上げた甲状腺機能障害についてのお話です。何度かお話ししてる様に最近当院での受診動物の平均年齢はおそらく10歳を超えており、それ故どうしても「心不全や腎不全(慢性腎臓病)」や「腫瘍」「慢性◯◯」等増えてきています。その一つに今回のテーマである「甲状腺機能障害」があり、そのための診断に当院で使用してる検査機の紹介と共に取り上げてみようと思います。
⬇︎ 当院の「甲状腺機能検査器」です。この器械はかなりの優れ物で、他にも「副腎皮質ホルモン」や「猫の炎症マーカー」を調べる事が可能です。この炎症マーカー(炎症の程度を推測する値)、犬の場合は人間の方でも用いられる『CRP」という炎症マーカーあるけど猫ではほとんど有用性なく、代わりに「SAA」という炎症マーカーが現在使われています。実はこれ開発当時は世界的にも例が無く日本が先駆けて開発を行ったものらしいです。それにしてもここでもやはり、「猫は小さな犬ではない」という言葉が浮かんできますね。
またこの「炎症マーカー」誤解されがちですが、いわゆる「外耳炎」や「皮膚炎」等炎症という呼び名が有ってもあまり上昇しません。人間の方で「腫瘍マーカー」というのがありますが、これも腫瘍と名が付いたら何でもかんでも上がるわけでもなく腫瘍の種類や進行程度によって感度がかなり違うようです。それと同じ様に炎症の度合いや調べる時期によってかなり数値に変化が見られる時があり、あくまで一つの目安として今現在猫での有用性が認められているというものです。
この検査機を導入してから、それまで一般検査も白血球も高くないのにどうしてこんなに不調なんだろ?と思う様な猫でも、この「SAA」が反応してる事によって身体のどこかに炎症ある事が分かり治療しやすくなりました。ただしこの「SAA」は「反応比較的早いけど収束も比較的早い」という特徴あって、検査時期遅いとどんどん数値が下がっていく傾向あるので注意が必要です。
少々脱線してしまいました。甲状腺は首(いわゆる喉仏の下)にある蝶の形をした、全身の代謝に関わるホルモン(俗に言う元気ホルモン)を分泌している器官です。以前に触れてるように猫では老齢になる程甲状腺の数値上がる子多いけど、犬では逆に圧倒的に下がるケース多くて、概ね10歳以上で「怪しいかな?」という子を調べると2〜3割程度の子に異常値がみられる感じです。
甲状腺の数値低いとどうなるのか?ですが、目立って感じるのは「太りやすい」「皮膚病が出やすい」「何となく元気無く寝てばかりいる」「寒くも無いのに震えている」などで、一般的にほとんどが「歳のせいかな?」と思われる様なことばかりです。好発犬種は中型犬〜大型犬に多いとはされてるけど、トイプードルやダックスフントのような小型犬でも結構よくみられる気がします。
基本的に診断はまず甲状腺の数値を測る訳ですが、ただし「甲状腺機能低下症」の場合単にその数値だけをもって診断は難しく他の各種病気によっても影響受ける場合があるので、通常よくみられる「高コレステロール」があるか無いかや外注検査も含めてトータルに検査を重ねていく必要も時としてあります。そのため余程の事がないと最初から治療開始(甲状腺ホルモンの投与)する子も多くはなく、また治療開始後も複数回来院して頂く必要があるのでよろしくお願いします。
なお治療開始後の血液検査のタイミングもこれまた非常に重要で、ホルモン剤内服後数日も経つと完全に数値は元に戻ってしまいます。専門家の意見では投薬後24時間以内ならいつでもOKと以前セミナーで仰ってましたが、自分的には24時間近くも経つとほとんど下がってしまう感じなので、食事との絡みもあるけど概ねホルモン剤投与後6〜12時間以内での来院をお勧めしています。最後にこの投薬治療は「治す」ではなくあくまで「コントロールする」なので、基本的には一生涯薬を飲み続けて元気で健康的な生活をキープして行くのが目標となります。
⬇︎ 当院の各種検査表ですが、1番下のが甲状腺検査でオーナーさんにお渡ししてる物です。犬も猫も結構正常値に幅あるのがお分かりになるかと思います。
※ ところで最近の傾向として診察の波がかなりあり、午前中恐ろしく混んだかと思うと午後はほとんどガラガラという日も珍しくありません。スタッフ人数や病院のキャパもあって予約システムは行ってないので、お時間にはどうかゆとりを持っておいでくださるか、あるいは午後の診察として早々診察券をお出しになって一旦外出する事も可能ですのでご利用なさってください。