療法食については過去にもココやスタッフ日記でも取り上げてるけど
ネットでは色んな病気の情報が溢れてるし、現実的に先生によっても考え方や治療方法に差があるので戸惑ってるオーナーさんもいるかもしれません。正直この食事療法に関しても同様ですが、ただし経験上からも又多くの先生達も認める食事療法ですので改めてその重要性について考察してみたいと思います。
⬇︎ レントゲンで石が見える時は勿論だけど、下写真の様に沢山の結晶が見える場合も食事療法は必須です。
一説には健康な子でも4〜5割の子に結晶が見られるとされてるけど、ただ当院で治療開始して食事療法キチっとされてる子の場合4週間後の再検査ではほぼ結晶すら出て来ません。なので尿路結石においていかに食事療法が重要か、先ずはこの点を十分理解してほしいと思います。
まず治療に先立って大事な点は、いくら薬を飲ませてみても根本的に治すというよりは対処療法なので、症状が軽くなっても結石が完全に溶けたわけでも排出されたわけでもないという事です。結石は溶けるタイプと溶けないタイプの石が有るので食事療法さえやってれば必ずしも完治というわけにもいかないのも事実で、溶けないタイプの場合いくら食事療法完璧でも、石はいつまで経っても溶けて排出はされないので可能な限り手術で取ってあげるしか方法がありません。
この溶けるタイプと溶けないタイプの違い、そのカギは「尿のpH(ペーハー)」にあります。
はるか昔に聞いたようなphというお方も多いかと思うけど、「酸性〜中性〜アルカリ性」というアレです。このphが酸性に傾いたりアルカリ性に傾いたりするとそれぞれ異なった結石が出やすくなります。通常アルカリ性に傾くとできる石(ストルバイト等)は溶けやすく、酸性でできる石(シュウ酸カルシウム等)は溶けないという傾向にあります。これは尿検査による石の結晶を見分ける事で概ね判別できるので、必ず可能な限り尿検査を場合によっては定期的に検査するようお勧めしております。
⬇︎ 写真だと分かりにくいけど、左が溶けるタイプで表面ザラザラ、右が溶けないタイプで表面ツルツルです。溶けるタイプは尿検査で引っかかりやすく、溶けないタイプは引っかかりにくい傾向にあります。溶けないタイプは文字通り溶けないので結晶も出にくいという訳です。
ちなみに最近猫の場合はほとんどの子が完全室内飼いだけど、それによってマーキングが無くなったり運動が少なくなって発症しやすいとも言われています。「運動→乳酸が溜まる→尿が酸性に傾く→石が溶ける」という図式です。
猫はアルカリ性でできる石が多く、犬はどちらかというと酸性でできる石が多いというのも案外この運動量の違いによるかもしれません。運動すればするほど乳酸溜まって溶けない「シュウ酸カルシウム」が出やすい、というのも何か嫌な話ではあるけどあくまで理論上はそういう事になります。もっとも犬は散歩中にあちこちマーキングして歩くので帳消しかもしれませんが、ちょっとモヤモヤする感じですかね。
以上のように食事療法は尿phのコントロールにあるので、食事やおやつの中に石の成分が入ってるかどうかも大事だけど、それを与える事によってphがどう傾くのか?という事が最大のポイントになります。こういう性質を利用して結石を早く溶かしたり、あるいは再発しないようにと尿phを調節するのが療法食というわけです。なので基本的にそれ以外の物を与えてはほとんど意味なく、水も基本的には水道水のみで◯◯水や井戸水はphに影響与える可能性大なので注意が必要です。
なお療法食は色んなタイプがあり、昔は単に「石をガンガン溶かす」「石をゆっくり溶かしてそのまま維持する」という物だったのが、「塩分制限で腎臓に配慮」「カロリー制限でメタボ配慮」「精神的ケアも出来てストレス軽減」などが発売されています。
特に膀胱結石を含む「猫の下部尿路疾患 猫泌尿器症候群(FUS) パンドラ症候群 パンドラの箱」は色んなストレスによって引き起こされると言われており、最後に挙げた製品は嗜好性も良いようなので当院含む多くの動物病院でお勧めになってるようです。
ご来院頂ければ食事療法に精通してるスタッフもいるので何なりとお聞きください。