前回避妊手術と乳腺腫瘍の関連性を取り上げたので、今回又久しぶりに乳腺腫瘍の手術についてお話ししようと思います。これまでの関連ブログは、

キャンサー(癌)

抗がん剤治療

腫瘍の検査(細胞診)

ですので、よろしければクリックしてご覧なさってみてください。

特に最初の「キャンサー」はイメージ湧くかと思うので、ご興味ある方は是非見て欲しいです。

 

 

 

⬆︎ 古代ギリシャのヒポクラテスが乳がんを「カニの様な」という記述をしてたそうですが、その時代はいったいどの様な診断や治療を行っていたんでしょうかね?

 

 

 

さて犬や猫の乳腺は左右合計で8〜10個有る(故に沢山産める)けど、これは乳腺腫瘍の数も人間に比べて多くなる可能性があるという意味にもなります。実際腫瘍の摘出個数が3〜4個というのは珍しくないし、手術の傷口も多分一般の方々が想像する以上に大きいかと思います。

術前の説明も十分してるつもりではあるけど、手術後に見て相当びっくりされる方もいらっしゃる位乳腺腫瘍の手術は大変です。なぜなら安全マージン(外科マージン)を考慮して、実際肉眼的に腫瘍が見える範囲以上に広範囲に切り取るからです。

 

当院の場合通常1個なら周辺乳腺含めて部分切除のみ、同じ側に複数個有る場合は乳腺の上から下までの全切除としており、この際の避妊手術は基本的に今現在は行っていません。

これは過去に乳腺摘出と同時の避妊手術は勿論、生後半年程度で避妊手術した子の乳がん発生も数例診ているからです。可能な限りはやった方がベターでしょうが、やはり2歳前というのがキーワードかと思います。

 

これはその道の大家と言われる先生「大御所」もセミナーでそのように話されてたし、特に高齢でリスクある子の場合出来るだけ短時間で済ませるためにも、当院ではここ最近そのようにオーナーさんにも説明して行っていない現状です。

 

 

 

⬇︎ あまり良くない事ばかり書かれてるけど、1番上のは細胞診と組織検査との違いについてです。針を2本刺して調べる細胞診と取ったのを丸ごと送って検査するのでは、検体の情報量に差があり過ぎて的中率も違うという内容です。特に乳腺腫瘍が複数個有る場合は、良性と悪性と炎症性と全部混じってるケースも有るので細胞診はあまりお勧め出来ません。

 

真ん中のサージカルマージンはいかに広く切り取るかという事と、猫は犬に比べて乳がん再発率が高いという内容です。これは以前からも言われてて「猫の乳腺腫瘍は悪性が多い」「猫の乳がんは術後の再発が多い」「猫は炎症性乳がんが多いから手術は好ましくない」などあるけど、ただそうは言っても悪性の場合切り取らずにそのままなら近いうちに大きくなって最終的に肺転移などして亡くなります。最初から抗がん剤でタタクという手段もあるけど、猫の年齢や腫瘍の大きさにもよるものの基本的にはやはり可能な限り切除が好ましいと思います。ここら辺はオーナーさんのお考えもあるので、十分なインフォームドコンセントが必要と考えています。

 

最後の3つ目は術後の再発についてだけど、再発した子の多くが手術した側と同じ側という内容です。これは乳腺は各々独立してるわけではなく、上から下までリンパ管や血管で繋がってるため同則に再発しやすい特徴があります。それ故犬や猫の場合片側全切除や両側全切除も普通に行われ、更にはその上下に存在するリンパ節の摘出までも行われます。ただこの1番の問題点はあくまで悪性(乳がん)ならという前提条件で、過去には悪性で間違いなかろうと広範囲切除したら結果は全ての腫瘍が良性だったというケースも稀にはあります。

 

 

 

※ ⬇︎ 以前ブログで取り上げたセミナーで講師から聞いた内容だけど、見やすいようにもう一度アップしておきます。

 

「先ず避妊手術については以前にもお話した通り2歳を過ぎての手術は予防効果に有意差無しとされており、今回のセミナーの先生も同時に避妊手術は行っておりませんでした。」

 

 

「次に切除範囲は、乳腺片側全切除ケースは複数個ある場合であり、1個のみの場合は周辺乳腺含めた部分切除でもその後の発生率に有意差無しと結論づけられています。これには乳腺部周辺のリンパ系と静脈血の流れが関係しています。よって先生も今回説明されてた手術では周辺乳腺含む部分切除となっています。」

 

 

「なお部分切除してそれを組織検査した上で改めて手術という方法もあるけど、どうせ全身麻酔入れてやるなら最初から全切除でやった方がという事で、現在先生の所ではほとんど最初から完全切除で手術を行ってるそうです。」