今回は『猫の慢性腎臓病』についてです。少し趣向変えて、合間見計らいながら考えを整理しながら、という事でちょっとずつ?アップしてみようかなと思っています。遅くとも1週間以内には完成させようと思ってますので、どうかよろしくお付き合い下さい。

 

コロナ禍の影響でオンラインセミナー花盛りな感じで毎日視聴するのも大変なんですが、新たな知見知識に触れる機会が増えるのも又喜ばしい事であり嬉しい限りです。以前にもお話ししたけど、医療の世界は日進月歩でアップデートされバージョンアップされ、いつの間にか新たなスタンダードに置き換わります。

 

今回の『猫の慢性腎臓病(以前は一般的に慢性腎不全)』は昔からよくある病気ですが、重要な鍵となる食事療法や内服薬の発売も増えてきて選択肢も増えました。

オーナーさんも治療受ける子も大変だと思いますが、あまり無理のない範囲で出来るだけ頑張って頂けたらと思います。ちなみにうちの猫も以前 糖尿病 で治療してようやく落ち着いたと思ったら、今度はコレでただいまずっと治療中です💦

なお例によって写真の多くは諸般の事情により、近いうちに削除予定となっていますのでよろしくお願いします。

 

 

⬇︎ たまにオーナーさんからも原因聞かれますが、一般的に「塩分」は問題視されるけど実は色々有ります。ただ全てを特定するのはなかなか困難で、検査結果に応じた対処療法が基本になるかと思います。

 

⬇︎ 「猫エイズウイルス」との関連性が分かっています。勿論全ての腎臓疾患の猫が陽性という意味ではなく、エイズ陽性だと腎臓障害が出やすいというデータが出ているようです。

 

猫のウイルス検査

猫エイズと白血病

 

⬇︎これ実はかなり衝撃的です。衝撃的過ぎます。ここにアップするかどうかも実は大いに迷ったデータです。歯周病との関連性は人間でも有名ですが、もう一つ「混合ワクチン」によって腎臓障害の発生リスクが高まるという報告が海外では出てるようです。「猫の種類や年齢オスメス等」によって違うかもしれないけど、いずれにしても発生リスクは高いようです。毎年1回注射群と3年に1回もしくは打たない群とでは、およそ5倍の開きがあるようです。

元々混合ワクチンに関しては最近日本でも3年に1回への見直し議論が一部出ており、将来的にそれが一般化する可能性もあるかと思います。ただ現状ワクチンメーカーから正式なアナウンス無く、また今のコロナワクチンもですがそれぞれ抗体価の上がり方下がり方には差があり過ぎて、3年に1回で十分な子もいれば2年でもう全く抗体価無しという子も当然いるはずです。本来なら抗体価検査(ワクチン抗体検査)を行った上でワクチン打つ打たないを決めるべきでしょうが、なかなか実際簡単ではない状況です。

 

⬇︎ ただし実験的にはワクチン投与で誘発は出来ず、因果関係の確認証明はできなかった様です。ただ統計上であっても腎障害の発生頻度に差が有るのはやはり気になるところです。コロナもですが、ワクチン効果と副反応のリスクのバランスをどう考えるか、難しい問題ですね。

 

⬇︎ 老齢(概ね7歳以上)の場合腎臓病を患う率が高くなり、死亡原因のおよそ1〜2割を占めるデータもあるようです。経験的にも、10歳位になって何らかの病気をきっかけに腎臓疾患を併発し、以後そのまま慢性的に推移していくケースは結構多いように思います。

 

⬇︎ 病気の進行程度の目安になるいわゆる「ステージ」の表です。文献によって少し違いますが、概ねこれが今のスタンダードかと思います。血液検査での関連項目は他にも幾つかありますが、特に「クレアチニン」という項目が重要視されてます。食事内容や空腹時満腹時でも変化するので、理想的には空腹時の検査が望ましいとされています。

 

⬇︎ 治療はこれらを幾つか組み合わせて行います。基本的に重要なのは食事療法ですが、程度に応じて内服薬や皮下点滴(リンゲルや生理食塩水)なども行って維持していきます。徐々に進行する慢性腎臓疾患の場合最初はなかなか特徴らしい症状が現れないため、多飲多尿や食欲不振、体重減少などが酷くなってから治療開始するパターンも決して珍しくない現状です。

ただいかなる治療しても現段階では一度壊れた腎臓の細胞は2度と元には戻らず、残った細胞で腎臓は一生懸命頑張るのですがやがて限界を迎える時がやってきます。お薬や皮下点滴はそれを手助けしてあげる治療であり、悪く言えば「延命治療」ではあるものの少なくとも見た目意外と元気で食欲もそれなりという子も少なくありません。

人間の様に「血液透析」や「腎臓移植」がまだまだ一般的ではない現状からすると、この病気の要点は少しでも早く発見して適切な治療を開始するという事に尽きると思います。

 

食事療法

 

⬇︎ 今回のセミナーで1番感じたのが、「食事療法」の重要さでした。

この病気に限らず食事については都度説明しているケース多いですが、症状悪化してからは勿論全てのステージにおいても行った方が良いとの事。ただしステージ1の場合は「シニア用」でも十分とのお話しでした。シニアになる程腎臓疾患は増えるわけですから理にかなってると思います。データの取り方にもよるのでしょうが、普通の食事だと1年持たない様なケースでも2倍程度延命できている様ですので、いかにこの「食事療法」が大切かお分かりなるかと思います。これは人間の方でも、「高脂肪」「高糖質」「高カロリー」の好きな物ばかり食べていたら成人病まっしぐら、というのは間違いないでしょうからある意味当然なのかもしれません。

 

ちなみに当院では「フードアドバイザー」の認定受けてるスタッフもおりますので、食事に関する質問も遠慮なくご相談ください。最近は「消化器関連」や「ダイエット」に関するご質問も多い様です。  スパイシー

 

⬇︎ 水分補給は非常に重要で、特に脱水が見られる例や進行してしまった腎臓障害においては定期的に行う必要があります。当院では週2回位からとお話ししてますが、ステージングと病状の程度によってはサイクルはどんどん短くなっていきます。ただ難しいのは点滴入れれば入れる程身体(腎臓や心臓)に必ずしも良いというわけではなく、時折血液検査で電解質や脱水の程度を確認しながら回数と点滴量を考慮する必要があります。そうしないと状態次第では「むくみ」や「肺水腫」といった致死的展開に至る可能性もゼロではありません。

 

慢性腎不全

 

⬇︎ これも今やスタンダードな治療となっています。個人的には食事療法がキチッとされてれば、あるいは血液検査で「リン」の数値が高くなければ必要なさそうな気もするのですが、可能な限りは腎臓専用食と一緒に与えましょうという内容です。

 

⬇︎ 内服薬に関しては業界内でもこれまで色々意見出てますが、基本的にステージ2〜3で蛋白尿認められる場合はやった方がベターかと思います。これまでのお薬は主に腎血流量を増やして改善を図るという「血管拡張作用」でしたが、最新の治療薬「ラプロス」はこれに加えて「血管内皮保護作用」と「炎症性サイトカイン抑制作用と抗血小板作用」を有するというものです。何が何だか分からないと思いますが、早い話腎機能低下を抑えて症状の改善を図るというお薬です。

 

⬇︎ 6ヶ月間の投与試験においては、明らかに「クレアチニン」の上昇抑制効果が認められている様です。

 

⬇︎ 実はこれまで上でご紹介したお話しは数年前のセミナーのものであり、今回こちらの先生のセミナーが最新になります。これによると6ヶ月以上の長期(3〜4年)に渡る投薬試験でも、良好な状態で長期生存が可能であったようです。そもそも慢性腎臓病で3〜4年の生存自体が素晴らしい事であり、少なからずその効果が有るものと推測されます。当院でもびっくりする程「クレアチニン」が改善した子おります。

 

 

 

 

 

⬇︎ 犬の場合も基本的に猫と同様ですが、近いうちに取り上げてみようと思います。