寒くなってきましたね。秋田市の今日の予想最高気温は15℃で、向かいの病院駐車場の植木も色づいて来て秋の訪れを感じます。と同時に秋田の場合は雪景色の訪れも意味して除雪シーズンやって来るな〜っても思うけど、紅葉巡りなどの行楽シーズンであり、「食欲の秋」であり「読書の秋」であり、個人的には「芸術の秋」でもあります。
スタッフブログ含めてタイトルから過去の「秋のブログ」をリストアップしてみたけど、こんなにも有ったとはちょっと驚きました。それだけ色んな話題にも富む季節なのかもしれませんね。
さて伸び伸びになってた「ワクチン」についててですが、どこまで話題にするかにもよるけど長くなりそうなので「総論と「各論」に分けて2回でアップ予定ですので、今回もどうかお付き合いよろしくお願いします。
最初はズバリ「ワクチンは必要か?」です。人の新型コロナワクチンの方では今だにワクチン肯定派否定派に分かれており、知人にも一度も打ってない人はおりますが個人的には自己責任だと思っています。ただたとえ否定派であっても幼少期の各種ワクチンを否定なさる方は多分いないんじゃないでしょうか。我が子をポリオや水疱瘡やおたふくかぜから守りたいと親なら誰しも思うはずです。
同じ様に動物の場合も各種ワクチンを生後間も無く複数回(2〜4回)打つのはスタンダードであり、ほぼ全ての先生がこれを推奨してるので異論は無いはずですが、問題はその後の追加ワクチン接種についてでしょうか。
実はワクチン接種方法に関しては「世界小動物獣医師会」という所から「ワクチンのガイドライン」が発表されています。あまりにも長くて全てをご紹介出来ないので要約して話を進めていきますが、痒いところにも手が届くような細かい解説がなされており、お時間ある方は是非一度検索されてお読みいただく事をお勧めいたします。
お読み頂いた方はお分かりでしょうが、子犬子猫の時はワクチン接種開始時によって何回打つか?というのが変わってきます。以前にもお話ししたけど授乳によって親から得られる免疫(移行抗体)はワクチンの効果を阻害する事が分かっており、いつ親の免疫切れるか個体差もあって分からないので複数回接種が推奨されてます。
「何回打つべきか?」というのもその子の地域差含めた環境や授乳期間によって大きく違い、今現在多くのワクチンメーカーが生後およそ1ヶ月半と2ヶ月半の2回接種推奨だけど、ガイドラインでは最終接種年齢は16週齢以降が望ましいとされてます。
ワクチンの抗体完成には最低1〜2週間必要であり、社会性を養うため早く終えようという意図があるようですが、出来るだけ確実にワクチン効果を得たいというのと接種コストの関係から当院では2回接種の場合もう長らく生後2か月目と3ヶ月目で行っています。ただ最近は大手ペットショップとかで他県生まれの子だと早々1回目済ませてる子もいたりして、当然その場合は3回打ち場合によって4回打ちとなるけどワクチン上問題はありません。
ここまでお読みになって「では16週齢以降なら1回でもOK?」という疑問湧いた方もいるかと思うけど、結論は可能ではあるけどその期間の感染リスクある事と、特に猫においてはより強力な免疫獲得のブースター効果から最初は必ず2回接種が望ましいというものです。
初回ワクチンプログラム終えた後の「追加接種」についてもガイドラインには書かれてます。これも一言二言では済まない内容ですが、要約すると現時点では「コアワクチン(接種すべきワクチン)は3年毎に接種」「ノンコアワクチン(感染リスクに応じて打つべきワクチン)年1回接種」となっています。ただここで大きく問題になるのが、「コアワクチンとノンコアワクチン」とは何か?その特特性特徴は?というもので、ここの絡みも少なからずあって日本は勿論世界中どこでも同一のワクチンスケジュールになれない理由があります。
このガイドラインは規範的なものでは なく、例えば、多くの国または特定の地域でノン コアワクチンとみなされているものが、他の場所 ではコアワクチンとして使用されることは、十分 に考えられる 〜(中略)〜ガイドラ インの推奨事項を採用すると訴訟に巻き込まれる危険がある
この「追加接種」が世界的に統一されない理由は幾つか考えられるけど、ガイドラインにも書かれてる⬆︎ように地域によって病気の流行性がかなり違うのと、ワクチンの添付文書(説明書)で年一回の追加接種が推奨されてる事です。個人的には後者の方が非常に大きく感じられます。
もし万一推奨外(3年毎)でやって伝染病に罹ってもメーカーは一切関知しないでしょうし、添付文書や地域の動物病院が同じワクチンスケジュールでなければオーナーさんには不信感さえ持たれかねないでしょう。いわゆる目に見えない「同調圧力」や不安を感じるため、メーカーは勿論日本中の動物病院で同じ様に行われない限りなかなか3年毎接種が浸透するのは難しい気がします。
あともう一つ重要なのは多くの動物病院で混合ワクチンが主流となっており、特に犬の場合であればノンコアワクチンだけ毎年で他は3年毎というのは不可能に近いため、どうしても混合ワクチンを毎年接種という状況になっています。
猫の場合幸いコアワクチン(3種)は別れてるけど、ノンコアワクチンを毎年接種となると否応なく現状コアワクチン入り(5種)を打たないといけません。ただしガイドラインにも「猫の呼吸器疾患のコアワクチンには、犬のコアワクチンにみら れるような強固な防御効果も、免疫持続期間も期 待すべきではない。」と書かれてるようにワクチン打ってるのにそれらしき症状の子は実際いて、更にはコアワクチンであっても以下⬇︎のように記載されています。
『リスクの高い猫(多頭飼育で外出したりペットホテルを利用する猫)は年1回』
『リスクが低い猫(完全室内飼いでペットホテルを利用しない猫)は3年毎』
現実的に室内飼いの子であってもたまに脱走するかもしれないし、いつペットホテルに預ける状況にならないとも限らないし、ご高齢の方も多いので全てのオーナーさんと詳しく聞き取り調査しながら決めていくのは困難という他ありません。よって結論として、行う場合は以下⬇︎のようにもしっかり書かれてるので要注意となります。
『添付文書の推奨とは異なる場合、臨床獣医師は VGG推奨に沿ってワクチンを使用するために、 必ず飼い主からインフォームドコンセントを得る 必要がある。』
なんだ結局変わらないじゃないかって思われた方、スッキリする解決策としてワクチンの抗体価を検査してから決める方法もあります。以前にも取り上げたワクチン抗体検査 院内でも可能な検査キットを使って抗体価を確認し、低い場合のみワクチン再接種する方法です。ただしこれもガイドラインに書かれてるけど検査コストがワクチンのコストを上回ってしまい、手間と時間とコストを考えるとワクチンの方が手っ取り早いという事にはなります。あとこの検査キット、当院もですがおそらく多くの動物病院で体制整ってないと思われます。
<最後に>
出来るだけ簡潔に分かりやすくを心がけたつもりだけど、こうして読み返してもやはり少し難しいかもしれませんね。最近は簡単にネット情報で「3年毎」というのも出てくるけど、こういう細い部分まで掘り下げていかないと色々難しい問題を含んでいるように思えます。