これまで異物誤飲「異物誤飲摘出手術」「異物誤飲」に関して何度か取り上げてますが、前回「犬とチョコレートとコーヒー」だったので今回は猫に関してお話してみようと思います。
猫のブログ話題はどちらかというと内科的お話「猫のペット(同居仲間)ロス」多かったけど最近は結構異物誤飲で来院する子も多く、特に猫に関しては意外な物も中毒症状引き起こす可能性があるので要注意です。今回も少しずつ整理しながらアップ予定ですので、どうかよろしくお付き合いください。
⬇︎ 今時はネットで多くの情報を仕入れる事が可能な上随時アップデートされたり便利ではあるけど、やはり基本的な事や痒い部分にまで手が届く情報はアナログ(本)の方が良い場合もあります。もうだいぶ前に「動物臨床医学研究所」という所から発刊された専門書みたいな物で見やすく読み易い本です。
既にお話ししたように最近は完全室内飼いの猫が多く、昔のように薬物や毒物中毒での来院はほとんど無い状況ですが、代わりにというか逆に目立つのが各種異物の誤飲誤食です。その中でも今回は観葉植物とアロマテラピーに関するテーマで取り上げようと思います。
ちなみに都会の病院では完全室内飼い猫と小型犬がほぼ100%という病院もあるそうなので、色んな病気(特に伝染病や寄生虫疾患)は勿論誤飲誤食に関連する来院状況も結構違うかもしれません。
さてまず初めに、どうして猫は観葉植物を食べてしまうのでしょうか?
一般に「犬は雑食、猫は肉食」と言われてて本来は犬のように何でも食べる動物ではありません。野性の世界でもライオンやチーターやジャガーなど猫科動物代表選手がハンティングしてる動画は多数あっても、草食動物のようにのんびり草をはむはむしてる姿って想像出来ないですよね?
よく言われる理由としては「毛玉を吐き出すため」「繊維を取って便秘予防」「ストレス発散」などだけど、たしかに野性の世界だとハンティングした動物の毛も皮膚も場合によっては骨まで食べるとなればこれら全てが解消されるわけで、完全室内飼い多くキャットフード中心となった現代の猫達にとってはある意味必要な行為なのかもしれません。
⬇︎ 自宅リビングの観葉植物。背の高いのは光触媒で空気(臭気)をクリーンにするとかって人口物で、低いのは本物の卓上観葉植物です。置いてしばらくは猫が寄り付かないか念のため確認し、万一はむはむしたり飲み込んだりしないよう観察しました。
観葉植物を食べた場合の症状として「ヨダレ」「嘔吐」「下痢」「震え」「呼吸困難」「腎臓疾患」など挙げられるけど、どれもコレだっていう典型的症状でもなく、明らかに食べた形跡有って時間間もなければとりあえず吐かせる処置を当院では行っています。
それから水分補給の点滴や、血液検査をした場合ならそれに基づいて治療を進めていきます。ほとんどの場合解毒薬は無く、あくまで対処療法が治療の中心となるのでいかに早く気がついて対処するかがポイントかと思います。
猫にとって有害で危険な植物は軽く数百種類超えると言われるけど、有名なのはユリやチューリップなどの「ユリ科植物」で、誤食量次第では急性腎障害を引き起こして死亡する位猛毒とされてます。他には「ポトス」「幸福の木」「アロエ」「サボテン「アサガオ」「アジサイ」「ツツジ」「アイビー」「ゴムの木」などなど、調べればまだまだ出てきます。
反対に置いておいても大丈夫そうなのが文字通りの「猫草」、「パキラ」「ネムの木」「ヤシ科」「シダ植物」等あまり多くもなく、またこれらの植物も食べ過ぎるとたとえ猫草といえども過剰に吐いて胃炎や食欲不振が見られる感じします。実はウチはかつて猫草置いといたけどあまりに吐くので数週間で撤去しちゃいました。毛の長い長毛種でなければあんまり私は必要性を感じていません。
ようやく最後の「猫とアロマテラピー」についてですが、そもそもアロマテラピーとは何ぞや?です。
アロマテラピーとは
花の香り。フルーツの香り。森の香り。
植物の香りは、私たちの心や身体にさまざまに働きかけます。
アロマテラピーは、植物から抽出した香り成分である精油(エッセンシャルオイル)を使って、心身のトラブルを穏やかに回復し、健康や美容に役立てていく自然療法です。(日本アロマ環境協会)
では何故猫にとって精油は有害なんでしょうか?
一言で言ってしまうと次のように要約されます。
猫は肉食動物のため、植物由来成分の代謝が苦手
精油が猫の体内に取り込まれる経路は誤飲以外に、皮膚吸収や揮発した空気中の成分を肺から吸収することでも起こるとされています。香り成分である化学物質が鼻粘膜に付く事で匂いを感じ、そして体内に取り込まれた化学物質は肝臓の解毒酵素で分解され排泄される流れとなっています。
ところが猫は解毒に関係する酵素を一部合成出来ず、そのためアロマ成分を十分に代謝出来ず蓄積して中毒を起こしてしまう可能性が高いというものです。やはり肉食獣にとって多くの植物は有害で、場合によっては命に関わる危険性もあるという事を忘れてはいけないようです。
⬇︎ 皆さん何故に昔の映画ポスターなんぞ?と思われたかもしれないけど、この撮影当時まだ開業まもない私は「クマを眠らせてくれ」という依頼を受け撮影地の五城目まで駆けつけました。相手は子熊で体重もハッキリ分からずだったけど、「犬ならこんな量かな?」と注射してもほとんどあまり効果無し。そもそも目測での体重計算違いが大きいのか3回位追加注射でようやく眠ってくれました。
ここら辺は動物園の先生の方が詳しいでしょうが、年齢も関係するだろうけど動物によって効き具合に相当差がある、ひいては解毒能力にも差があるのかなと感じました。映画スタッフの1人が言ってた「さすが熊の胆(くまのい)は違う」とかなんとか、今でも忘れられません。