前回一通り鼻水・くしゃみ終えたらワクチンのお話を、と思ってたけど意外と長くなりそうなので新たに作成してみました。今回も整理しながら少しずつアップしていくのでお付き合い頂ければ幸いです。(なお例によって画像は近いうちに削除予定です)

 

 

 

⬇︎ まず慢性鼻炎とは何か?ですが、文字通り「鼻水・くしゃみ・鼻詰まり」などの鼻炎症状が慢性的に持続している状態です。反復して再燃する子の多くは良い時と悪い時のメリハリがある程度は有るけど、たまに年がら年中目ヤニはほとんど無いのに鼻炎症状のみ波は有るものの持続的な子がいます。これは「猫カゼ」の原因であるウイルスや細菌が何らかの影響与えてるのか、あるいはひょっとして他の何かが原因なのか?という内容になっています。

 

⬇︎ 今回のテーマは意外と厄介な問題です。原因追求は消去法で一つ一つ潰してクリアさせていくしか方法なさそうですが、問題はもし何らかのウイルスや細菌が原因だとしてもそれを同定する事の難しさにあります。「検査したら必ず原因となるウイルスや細菌が見つかるとは限らず、又検出された菌が原因とも限らない」、、ってどうにも夢も希望もない感じです。前回ブログのヘルペスでも触れたけど、「ウイルスの検出率は高くなく健康そうな子からも見つかる」となると検査する意味さえ疑わしい事になってしまいそうです。

 

⬇︎ 完全室内飼いではあまり問題なさそうですが、多少なりとも外出する子の場合は「異物・アレルギー・クリプトコッカス(真菌)」なども考慮する必要ありです。猫はクンクン匂い嗅いだり鼻を押し付けたりもするので、およそ鼻の穴から入るサイズの物であれば何でも異物の原因となり得ます。

一般的に外出時の草が多いとされてるようだけど、中には毛や猫砂が原因だった例もあるそうなので油断ならないです。ここにはレントゲンやCTで診断となってますが、草とか毛とか細い物はよっぽど塊になってなければ写って来ません。過去に人間用の細いファイバースコープ入れてみた事もあるけど、猫が小さすぎたのか鼻腔内が狭かったのか途中からファイバーが入っていかず断念した事もあるので、やはり異物の診断は非常に難しいものがあります。もし確認できれば直接摘出が1番望ましいのは勿論ですが、疑わしい場合は全身麻酔入れて鼻腔内洗浄してみるのも一つの方法とされてます。

当院に何度か来られてる方はお気付きでしょうが、実は私も長年鼻炎症状患っており、過去には手術受けたりレーザーで複数回治療受けたりと何度か耳鼻科通いした経験あります。私は今も自分で毎日鼻の中を洗ってるんですが、動物の場合洗浄も吸入も人間のように簡単には出来ないのが本当に残念で歯痒いところです。

 

⬇︎ たまにアトピー性皮膚炎も患ってる子を見ると「ひょっとしてアレルギー性鼻炎かな?」と思う時あるけど、猫では検査上の問題もあってデータ少なくなかなか診断には至らないという内容になっています。これまで皮膚病に関して何度か取り上げた際アレルギー検査についても触れてるけど、アレルギー体質かどうかは確認出来ても実際その結果が治療に反映されて完治に至るかどうかは別問題で、多くの専門家もあまり積極的に検査しているわけではないようです。

 

犬アトピー性皮膚炎

猫アトピー症候群

皮膚病

犬の食物アレルギー

アトピー性皮膚炎

 

私も含めて人間の場合はアレルギー性鼻炎の罹患率が少なくないところから、相当数の犬や猫も多いとは考えられるものの、特に猫は犬に比べて検査が限られてるので現実的にアレルギー性鼻炎という診断は難しそうです。

 

⬇︎ クリプトコッカスという真菌による報告例もあるようです。野外に広く分布し特に鳩の糞便によくみられる事から、周辺に鳩の集まる場所があって尚且つ外出する猫ちゃんの場合は要注意です。クリプトコッカスは「ズーノーシス」と言って「人獣共通感染症(動物由来感染症)」になり、時に動物から人間にも感染する恐ろしい病気です。健康な人の場合はあまり問題にはならないようだけど、何らかの病気にかかってたり免疫力が低下している人は肺炎や髄膜炎で死亡する事もあるそうで怖い感染症です。

ズーノーシスで有名なのは狂犬病やトキソプラズマやエキノコックス、更にはつつが虫病やサルモネラなど数多くあり、是非近いうちにこちらの話題も取り上げてみようと思います。(次回?)

 

⬇︎ 今回の内容で1番問題なのが多分コレで、慢性的に膿性の鼻汁や鼻出血が持続する場合「3割程度で腫瘍の可能性」があるという結論です。良性のポリープであればまだしも、悪性なら当然命にも関わってくるけど問題は診断とその後の治療経過です。レントゲンでの診断は極めて難しく、鼻汁や鼻出血を細胞診に出しても検出率は極めて低いとされています。私も過去数回検査機関に出してみて引っかからなかったけど、その後の展開で腫瘍性というのがわかった子もおりました。ただこれも重症度(進行程度)とタイミングの問題かと思います。

 

鼻腔内腫瘍の細胞診は以前にも(腫瘍の検査)触れてるけど、ストロー方といって100均の細いストロー使って麻酔下で鼻腔内をゴシゴシやったりするのですが、猫の場合鼻腔の狭さから果たしてそれが可能なのかちょっと疑問です。今回こちらのセミナーではそういうお話は無く、CTや組織生検(患部の一部を切り取るか針で吸引して調べる検査)のタイミングを逃さないようにって結んで終わりとなりました。(CTは大学病院や高度医療病院等へ紹介との事です)

ちなみにある腫瘍の専門家のお話だと、顔が変形する位腫れたり左右非対称的な容貌の猫はかなり高い確率で悪性腫瘍であり、抗がん剤や放射線治療行っても相当厳しいというお話が以前ありました。本当は写真お見せ出来れば1番分かりやすいのですが、あまりに生々しく痛々しいので省略といたします。

 

⬇︎ 結論は以下の通りで、「完治は難しい」という残念な結論です。多分異物の場合は除去出来れば完治でしょうが、それ以外だとどれも完治への道のりは険しいとしか言いようがありません。せめて原因だけでも確定出来れば良いのですが、なんともモヤモヤ気分でスッキリしませんよね。