急性腎不全からの生還
2025年8月27日
過去何度か腎臓疾患について取り上げたけど、
慢性腎不全
猫の慢性腎臓病
犬の慢性腎臓病
腎臓とリン
猫の高血圧(慢性腎臓病との関係)
猫の腎臓病は何故多い?
慢性腎臓病の食事療法
慢性腎臓病の内服薬
猫の慢性腎臓病(蛋白質は制限?補給?)
慢性腎臓病(皮下補液)
今回はそこから更に急激に悪化する、いわゆる「急性腎不全(急性腎障害)」についてのお話です。今現在当院にて慢性腎臓病で治療中の子は犬猫共に多いけど、極々稀に急性腎不全へと移行してしまう子がおります。急性腎不全は文字通り急激に腎機能が悪化して、排尿が全く見られなくなって尿毒症を起こしたりして亡くなってしまう恐ろしい病態です。
人間のように人工透析が一般的でもなく極めてハードルも高いので、通常は幾つかの利尿剤を組み合わせて治療していくけど残念ながら決して治療結果はよくありません。
今回はそこから見事に生還、と言っても急性期を脱して一山越えたという状態なだけですが、今現在も元気に治療中の猫ちゃんいるので話題にしてみたくなりました。
⬇︎ 低体温も生じやすいので、体温測りながら床暖房入れて治療中です。利尿剤の注射は勿論のこと輸液パックの中には血管拡張剤(利尿作用)他必要な薬も一緒に入れ、出来るだけ負担少ない様スローペースでゆっくり入れて排尿を促していきます。

ちなみに急性腎不全は通常高カリウム血症になるので、カリウム入ってるリンゲルなどはもってのほかで生理食塩水等カリウム添加されてない点滴をしないといけません。又ほとんどのケースでフロセミドという利尿剤だけでは対処不能で、特別な薬を時間あたり幾らという調整をしながらの点滴治療が必要となります。
⬇︎ 治療開始3日目の朝、ついに排尿がみられました。この時は私も本当に嬉しくて心の中で拍手喝采でした。と言ってもまだまだ完治には程遠く、というよりそもそも慢性腎臓病は完治しない病気なので、とにかく以前の様に内服薬でコントロール出来る状態に戻ればオッケーなわけです。

(オーナーさんから撮影とブログアップの許可を頂きました。ありがとうございます。)
さてその慢性腎臓病、大変酷な話ではあるけど「平均余命は2〜3年」と通常言われてて、当院過去最高でも5年半程でした。勿論いつどの様な形で診断するかにもよるでしょうが、一般的には(教科書的には)猫の場合クレアチニンという数値異常が3ヶ月間持続すると「慢性腎臓病」と診断されます。
実はこの子はまだ2歳ちょっと、このまま順調に回復して少しでも長生きして欲しいと思わずにはいられません。