スタッフ日記の方でも話題に上がってたけど、
ただいまフィラリア予防シーズン真っ最中です。そして今年は久しぶりにフィラリア感染のワンちゃんも来てしまいました。以前にもお話ししたけど、やはり秋田市内の住宅街と緑豊かで田園地帯や河川近くとは本当に状況違う感じです。
診断は検査キットを用いて行うんだけど、以下⬇︎の様に白い検査キット内に2本の縦線現れると「陽性」、つまりはフィラリアに感染してるという事になります。成虫少ないと反応鈍くて検出率も落ちるけど、逆にハッキリ反応が現れば現れる程フィラリアが何匹も心臓や肺動脈にいるという証拠なので要注意になります。
ちなみに猫にも感染例あるけど(世界的には人間でもあります)、猫の場合は数匹程度でも命取りなので、沢山虫が入らないと反応しにくい検査キットだと初期の検出はほとんど困難なので厄介です。
つまりある日突然咳し出したり突然死したりの原因にも、ひょっとするとフィラリアが関わってる可能性もあるので予防は大切です。まだまだ猫にとってメジャーな病気ではないものの、当院でも何人ものオーナーさんが予防されてますし、特にたとえ時々でも外出するような子なら是非予防薬の検討をなさってみて下さい。
⬇︎ 写真だと分かりにくいけど破線矢印部分の先がフィラリアの小虫で、スライドガラス乗せたばかりだと元気にウネウネ動いててすぐ分かります。こんなのが血液たった一滴分の中に何匹もいるわけで、全身の血液ともなると数百匹〜数千匹もの虫が泳いでる事になるのでたまったもんじゃないですよね。もっとも1番問題なのは、コレを産んだ親虫が心臓に入ってるという事実なんですが、、
治療としては、直接心臓から成虫を取り出す手術(ハートアタック)や首の頸静脈から引っ張り出す方法(吊り出し手術)、あとそれ以外は通常の内科的な保存療法があります。
治療法はそれぞれ一長一短で、「ハートアタックは設備と技術無いと出来ない」「吊り出し手術はある特定症状が発現しないと出来ない」という難点もあって、一般的によく行われるのは内科的対処療法と予防薬投与による成虫や小虫の殺虫治療です。
ちなみに「吊り出し手術」、当院の場合開業当初から10数年前までは毎年10件以上やってたけど、オーナーさんの意識の高まりと予防薬の普及によって手術適応症例はほとんど無くなりました。
さてここから少し重要なお話です。
「最初に予防薬投与の前には血液検査が必要」という事を聞いた方、あるいはそんな事は常識で毎年やってるという方まで色々いらっしゃるかと思うけど、本来メーカーは投薬にあたって血液検査を義務付けてます。
どうしてかと言うと予防薬は元々「駆虫剤」でもあり、もし万一フィラリアに感染してる場合、その予防薬(駆虫剤)によって成虫や子虫が急激に死滅する事によって重大な副作用が発現、もしくはそのまま一気に死につながってしまう可能性すら考えられるからです。
専用の駆虫剤もあるにせよ、成虫も子虫もたとえ死んでも消えて蒸発するわけでもなく、その死骸は肺動脈や毛細血管に流れて血管が目詰まりして臓器障害を引き起こします。一旦心臓に到達して子虫まで生まれてしまったら2度と元の状態には戻れないので、とにかく一生懸命予防するしか手はありません。
以上の理由から、特に最初に始める月はより慎重に、必要に応じて血液検査の上投薬しなくてはいけません。ただし当院の場合、私1人で数百匹のワンちゃんの検査を4月〜5月に行う(過去最高は1800匹近くの子が予防してたので)のは事実上不可能に近く、便宜上オーナーさんから十分に聞き取り確認調査を行なった上で処方しております。
⬇︎ 過去にもフィラリア症に関しては何度も取り上げてるので、よろしければ是非ご参考になさってみて下さい。